シュルレアリスム

現役美大生が解説!超難解な個性的現代美術・「シュルレアリスム」について

時代から見るシュルレアリスム

必然的に流行したシュルレアリズム

シュルレアリスムも抽象主義表現も、心の中に潜む無意識の願望をキャンバスに描きあらわすことで、画家たちの心の傷を和らげたり、言葉で上手く表現できないもどかしさを緩和してきたのではないかと考える私です。先ほどから何度かご説明している通り、無意識の願望というのは、幼少期に受けた心の傷が原因だったり、何らかの「不安」「ストレス」「抑圧された気持ち」などを抱えているがゆえに湧き出る願望と言っても、過言ではありません。1940年代、1950年代の世界情勢、アメリカ情勢からしても、人々に「不安」「ストレス」「気持の抑圧」をもたらすような時代だったのではないかな・・・と思ってしまうんです。そこで、シュルレアリスムが栄えた時期の時代背景について、ちょっとひも解いてみたいなーと思います!

第二次世界大戦

1939年から1945年のなんと6年間もの長きにわたって、かの有名な第二次世界大戦が勃発しています。シュルレアリスムの期間が、1924年から1945年なので、ちょうど第二次世界大戦と時を同じくしていますよね。はじまりはシュルレアリスムのほうが15年早いですが、世の中の情勢はもちろん戦争が始まる前から変化して、その結果戦争が勃発するわけですから、シュルレアリストたちもさまざまな不安感に襲われていたことと思います。この第二次世界大戦は、ドイツ、日本、イタリアの三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス連邦、フランス、ソビエト連邦、アメリカ、中華民国などの連合国陣営との間で勃発した戦争で、今のところ人類史上最大の戦争と言われているほど、全世界の善良な人々を巻き込む戦いになったんです(´▽`)

ヴェルサイユ体制

第一次世界大戦が終結して、第二次世界大戦が始まる前、ヨーロッパでは、1919年に第一次世界大戦のドイツに関する講和条約であるヴェルサイユ条約が締結されて、ヴェルサイユ体制が成立したそうです。ドイツやオーストリアは講和条約において領土の一部を失くしました。でもこれらの領土には多くのドイツ系住民が居住していたそうで、そんなドイツ系住民が少数民族の立場に追いやられたりするなどして、ドイツの怒りはフツフツと煮えていました。また、ドイツはヴェルサイユ条約で考えられない額の戦争賠償を課せられ、フランスが賠償金支払いを要求して上位の立場に立ったことで、ドイツでは社会不安が引き起こされました。精神面でも、金銭面でも、ドイツは苦痛な立場にたたされたそうです。

世界恐慌のはじまり

世界恐慌も第二次世界大戦が始まる直前の話。アメリカ合衆国は、1920年代にはイギリスにかわって世界最大の工業国としての地位を確立しました。そして、第一次世界大戦後の好景気を思う存分味わっていたそうなんです。ところが1929年、アメリカ経済は世界最大の工業国として、生産過剰に陥ります。また、農業不況が続いたり、機械生産導入などにより雇用が少なくなったり、株価が大暴落したりしました。このようなアメリカの大惨事は、フランス・イギリス・ドイツ・イタリアなどのヨーロッパにも影響を与えて、またたく間に世界恐慌へとつながりました。アメリカ・フランス・イギリスはいくつかの政策を打ち出してこの世界恐慌を突破しようと踏ん張ったのです。でも、残念ながらドイツ・イタリアには解決策の手段や資源がなく、ドイツ国民・イタリア国民は不安と怒りを募らせながら、政治批判をあからさまにすることのできない時代の中で、もがき、耐えたそうです・・・。

ファシズム

ファシズム???と思っている方も多いと思いますので、まずはファシズムとはなんぞや???といったところを解説させていただきますね(^^)ファシズムというのは、イタリアのムッソリーニと国家ファシスト党が唱えた思想や、それにまつわる政治運動、加えて1922年から1942年までの政権獲得時におこなわれたさまざまな政治的実践や政治的体制の総称なんです。ちょっと難しいですけど、これを覚えておくと今からのお話も少しスムーズかな(^O^)美術の世界もなかなかたいへんでしょ!?作品を作るだけじゃないんですよ~(;O;)世界史は必須ですからね・・・。いや~、世界史好きでよかったわ~、私(^o^)/

ファシズムのはじまりと第二次世界大戦

ファシズムの政治体制が最初につくられたのは、イタリアです。イタリアでは第一次世界大戦直後に経済がどど~んと落ち込んで、政治情勢も不安に陥っていたのですが、1922年、ファシスト党を率いるベニート・ムッソリーニが様々な運動の後、権力を獲得します。世界恐慌の苦しい状況のなか、ムッソリーニは1935年のエチオピア侵略をすることで世界恐慌を突破できると考えて、それが元となってイタリアは1937年に国際連盟を脱退しました。ドイツでは1933年、ヴェルサイユ体制の打破とナチズムを掲げるアドルフ・ヒトラーが首相に就任、翌年には総統に就任して独裁権力を握ります。ヒトラーは経済的には軍備増強と公共事業を行うことで、雇用の需要を生み出して世界恐慌を克服しました。そして、このあとも経済関係、国際関係で、いろんなことがあるのですが、ヒトラーがだいぶ強引な方で・・・。各国に強引な要求をしたことや、それが受け入れてもらえなかったこと、その他さまざまな要因から、ヒトラーは武力によって問題解決しようと決断し、それを受けて各国も宣戦布告を行い、第二次世界大戦が起きてしまったわけです・・・。

世界中の不安

簡単ではありますが、このような時代背景があったことは確かですよね。そして第二次世界大戦が勃発する前には第一次世界大戦が行われていて、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間も、世界情勢は落ち込んだり、あがったりを繰り返し、国民は何とかその不安定な情勢の中で生き残ろうと必死に働き、政府の考えに従ってきたんですね。そういった世界情勢にたいして、国民たちは「不安」や「ストレス」を抱え、「気持の抑圧」をおこなってきたんです。もちろん、芸術家たちも同じような不安を抱えていたに違いありません。でも、幸か不幸か、芸術家たちには自分の気持ちを、言葉ではない方法で表現するフィールドがあったわけです。そのフィールドで、言葉にできない思いや願望を表現していきたいと意識的に、もしくは、それこそ無意識に思ったかはわかりませんが、そんな背景があってシュルレアリスムが始まり、そして一つの現代美術史を作り上げたのだと私は感じています。