シュルレアリスム

現役美大生が解説!超難解な個性的現代美術・「シュルレアリスム」について

日本におけるシュルレアリスム(2)

日本のシュルレアリスト その2

前ページに引き続き、日本のシュルレアリストをご紹介したいとおもいます(^^)

北脇昇(きたわきのぼる)

北脇昇は日本のシュルレアリスム画家で、その作品の特徴は色彩がとっても豊かで、わりと幻想的な雰囲気のものが多く、風景や人物を見たままに描くような絵画がほとんどです。なので、一見、シュルレアリスムの理念を持っていない絵画のように見えるものもあって、絵本に出てきそうな綺麗な色味の絵画もあります。ただ、やはりそこはシュルレアリスト。奇妙で「なにこれ???」と首を傾げたくなるようなもの、無意識の願望を表しているのかな?と思えるようなものも、数多く残しています。彼は名古屋で生まれ育って、画家としての活動は主に京都でおこなっていたそうです(^^)

北脇昇の歴史

ごく簡単に、北脇昇の美術に関する歴史をまとめてみますね~。けっこう色んな活動などに参加している人物で、精力的に美術活動に取り組んでいた様子が伺えますよ!!

1919年~1921年
鹿子木孟郎(かのこぎたけしろう)の画塾で絵を学びます。
1930年
津田青楓の洋画塾に入塾します。
1932年
二科展に初入選して、同年に京都洋画協会の結成に参加します。
1933年
独立美術京都研究所の開設に力を尽くします。
1935年
京都洋画協会を解散して新日本洋画協会を作ります。小牧源太郎に出会います。
1930年代後半
シュルレアリスムの影響を受け始めます。
1938年
創紀美術協会の結成に参加します。
1938年
「眠られぬ夜のために」で京都市展市長賞を受賞します。
1939年
美術文化協会の結成に参加します。
1946年
美術文化研究会、京都美術会を発足します。
1947年
日本アヴァンギャルド美術家クラブ、京都新美術人協会の結成に加わります。
1948年
日本美術会京都支部長となって、美術文化協会、モダンアート展などに毎年出品するようになります。
北脇昇「独活」

1937年に発表された「独活(うど)」という作品は、シュルレアリスト北脇昇を誕生させた作品でもあると言われています!「独活」は、独活をまるで踊っている人間の姿のような雰囲気に見立てている、ユーモア溢れる作品です。ユーモアの中にも、独活が影となってあらわされている様子や、周りの暗い雰囲気には、どことなく不安感を感じさせる要素があり、彼なりの無意識の願望が映し出されているのかな~、と思えることも確かです。手前には「独活」にちなんでか“独活の大木”のような切り株があって、その切り株には顔にも見えるような木の模様がほどこされています。見る人によって様々な視点を与えるという要素においても、シュルレアリスムの理念に基づいていると言えるかもしれませんね!!!

北脇昇「空港」

こちらも上記で紹介した「独活」と同じ1937年に発表されました☆楓の種子が飛行機のように地面に着陸していて、わきに棘皮植物のようなものが、ターミナルのように建っているという作品。この幻想的な感じは北脇昇の独特な世界観で、シュルレアリスムを自分なりに仕上げているような気がします。(でも本来は、自分なりに仕上げると言う意図が見えてしまってはシュルレアリスムとは言わないのか!?う~ん、どうなんだろう!?)ただ、植物が中心の作品ではありますけど、その雰囲気は無機質で、写実的です。エルンストのフロッタージュなどの影響がとっても表れているのですが、真似だけではなく、北脇昇の自分なりのまとめ方も感じられるので美術的評価は高いみたいですよ(=´∇`=)

北脇昇「眠られぬ夜のために」

この「眠られぬ夜のために」と言う作品は、北脇昇さんの作品のなかでも、好きな絵画です(^^)というのも、まずは見た目が美しい・・・☆もちろん、いろいろと奇妙な点はありますけども、不安感よりも、画面中央に咲く花のようなものにスポットライトが当てられたような雰囲気は、幻想的で、ちょっぴりおとぎ話のような要素すら感じます。さて、この「眠られぬ夜のために」という作品は、なんとなく彼が意図しているところがわかるような気がします。あの花に当てられたスポットライトは“朝日”かな?そして、花以外に、木のような物体がいくつか描かれていますが、見方によってはちょっとした“木のお化け”にも見えます!この“木のお化け”は、眠れない夜に、だんだんと色んなものが気になりだして、普段はなんとも思わない壁の柄が顔に見えたり、普段は気にならない時計の秒針の音が、やたらと気になったり・・・そういった不安感をあらわしているのかな?眠れない夜というものほど、長く感じるものはありません。その不安感と眠れない焦り、そして、早く朝になって、カーテンの隙間から朝日が差し込んでほしいという願望を表している???と勝手に想像してみました(^O^)シュルレアリスム的な要素は薄い気がします!

北脇昇「流行現象構造」

こちらも1937年の作品となります!この「流行現象構造」は、北脇昇を知らなかったり、シュルレアリスムだのに興味がなくても、なんとなく楽しめる作品になっているかなと思いますよ(=´∇`=)というのも、パッと見の色使いがキレイ!!空があって、蝶が飛んでいて、リボンがちりばめられていて、全体的に淡い色彩で・・・(*▽*)女の子の気持ちをくすぐるような作品ですよね!!でも、この「流行現象構造」は、もちろん女子のハートをつかむために作られた作品ではありません(笑)北脇昇は1937年に制定された文化勲章に対する反発があったそうで、文化勲章は“胸にリボンをつける・・・”ということから、リボンをモチーフにした作品がこの頃非常に多くなったようです(^^;)この「流行現象構造」も、そういった流れの1つらしい・・・です。反発から生まれたにしては、あまりにも穏やかで美しい。でも、こういう解説がない限り、まさか文化勲章への反発とは想像がつかないですね(笑)

北脇昇「クォ・ヴァディス」

こちらの作品は1949年に発表されたものです(^^)画面中央に一人の男性が大きく描かれています。その男性は背を向けて描かれているんですけど、服装はよれよれで茶色の背広、茶色のズボン、茶色の帽子、茶色の靴をはいています。右肩に赤茶けた袋をしょって、左の小脇に分厚い本を抱えて、右足を一歩出そうとしている様子です。もしくは、それまでずっと歩き続けてきたけれど、この場所で「さて、次はどこへ行こうか」と立って考えているようにも見えます。男性の目の前には、海か・・・それとも白い大地か・・・。どこまでも広がっています。地平線のようなものも見えて、地平線の左側には黒雲に覆われて激しい雨が降っている様子が描かれています。地平線の右側にはデモ隊の行進が列を成しています。男性の足元を見ると、左側には大きな中身が無い貝が殻の口を上に向けて転がっています。また男性の右側には、四角柱に二枚の板きれを打付けられた標識があります。デモ隊と黒雲の方角を指し示す様に見えます。「なにこれ???」の要素は私にとっては少なく、シュルレアリスムの感じは受けませんでした。でもシュルレアリスムの作品ですけどね。

靉光(あいみつ)

靉光さん、こちらも名前は女性風ですけど、男性の方ですよ(^▽^)本名は“石村日郎(いしむらにちろう)”ですって!!!めっちゃ男前の名前じゃないですかっ!!!まあ、そんな靉光ですが、昭和のシュルレアリスム画家のお1人です。この方も、39歳という年齢で亡くなっています。戦争で兵隊として満州へ行き、赤痢とマラリアのため日本に帰ることができずに、そのまま亡くなったそう・・・。非常に残念ですね。この方も、もっと生きていれば、もっと違った形のシュルレアリスムに行き着いたかもしれないんですが。彼は、自由に描きたい気持ちと、戦争で自由な絵を描けないという苦しい立場の中で、非常に悩み、つらい思いをします。戦時下の状況から、戦争画を描く事を国から迫られ、“自分には戦争画は描けない。どうしたらいいのか。”と泣いたんだそうです。そんな悲しい思いを持ちながらも、自分らしい絵を描こうと一生懸命に打ち込んだ靉光について、少しお話していきましょう。

靉光の作品はあまり残っていない

靉光は広島県出身の画家なんですが、故郷広島に自分の作品を保管していたそうです。そのため、広島の原爆投下の際に、作品が消失してしまい、残された作品の数は多くありません。その中でも、有名な作品をいくつかご紹介していきますね。

靉光「眼のある風景」

これはテレビでもとりあげられたほど、有名で強烈な作品です。日本のシュルレアリスムの一つの到達点と呼ばれた絵なのだそう。ゴツゴツした岩場のなかから、何か視線を感じる・・・。そうなんです、岩場の影から1つの“目”がこちらをじっと見ているんです(((p(>o<)q))) ギャアアア!!!これは、こちらも釘付けになってしまうような、緊張感のある“目”。岩場も、たぶん岩ではない気がします。とにかく「なにこれ???」といった感じは、シュルレアリスムっぽいです。でも、これが無意識の願望だとしたら・・・どんな願望なんだろう(^^;)絵画全体としては、赤茶けた色味で、不安感も存分にあります。この岩場に突然の雷雨でも降りそうな、そんな予兆すら感じさせる絵画です。

靉光「帽子をかむる自画像」

こちらは1943年の作品でございます!晩年の自画像3連作の1点です。がっしりとした肩に太い首、上半身もがっちりと大きく描かれていて、確実に存在感アリの1枚ですよ!!全体的には、飾り気もなく、単に自画像といったかんじですが、丁寧に描かれています。家族の留守中に、1人でアトリエに閉じこもって、ひそかに描かれたという靉光の自画像です。こっそり描いたんですね(笑)恥ずかしかったのかな(≧∇≦)でも、1人で自分自身を見つめて、向き合って描いたんだろうなぁ・・・という静寂さがあります。落ち着いて鑑賞できる1枚です!

靉光「白衣の自画像」

「帽子をかむる自画像」とともに描かれた、晩年の自画像です。内容は「帽子をかむる自画像」と同じような感じ(^^)髪型と服がちょっと違うくらいかな。

靉光「梢のある自画像」

「帽子をかむる自画像」「白衣の自画像」とともに描かれた、晩年の自画像です。内容は「帽子をかむる自画像」「白衣の自画像」と同じような感じ(^^)髪型と服がちょっと違うくらいかな。ってさっきと解説が一緒でスミマセン(笑)